日本の研究チームは、恋愛関係にあることが主観的な幸福感を高め、脳内の特定の部位に構造的な変化をもたらすという研究結果を発表しました。
恋人がいる人といない人では、心や脳にどのような違いがあるのでしょうか。この記事を読めば、恋愛が私たちに与える驚くべき科学的影響がわかります。
今回のポイント
- 恋人がいる人はいない人よりも主観的幸福感が高い
- 恋愛中の人は脳の右背側線条体の灰白質密度が減少している
- 脳の変化は社会的な喜びへの敏感さを表している可能性がある
大学生113人を対象としたMRIによる脳構造の比較実験
研究チームは、健康な男女の大学生および大学院生113人を対象に実験を行いました。
参加者は、交際期間が平均17ヶ月の「恋人がいるグループ(56人)」と「恋人がいないグループ(57人)」に分けられました。
実験では、MRI(磁気共鳴画像法)という、強力な磁石と電波を用いて脳の内部構造を撮影する装置を使用しました。これにより、脳の構造的な違いを解析しました。
さらに参加者のうち68人には、MRI測定の直後に「主観的幸福感スケール(SHS)」という質問紙調査を実施し、日頃の幸せの度合いを測定しました。
ここで使われた「VBM(ボクセルベースモルフォメトリー)」とは、脳の画像データを解析し、特定の部位の体積や脳細胞の詰まり具合を調べる手法のことです。
恋人がいる人は幸福度が高く、脳の線条体が変化している
解析の結果、恋人がいるグループはいないグループに比べて、主観的幸福感の数値が有意に高いことが確認されました。
さらに脳の構造解析において、恋人がいるグループは「右背側線条体(みぎはいそくせんじょうたい)」と呼ばれる部分の灰白質密度(かいはくしつみつど)が有意に減少していることが判明しました。
線条体とは、快感や報酬を得たときに活動する「脳の報酬系」の中心的な部位のことです。灰白質密度とは、神経細胞が集まっている部分の密度のことです。
このデータの詳細を以下の表にまとめました。
| 測定項目 | 恋人がいるグループ | 恋人がいないグループ |
|---|---|---|
| 主観的幸福感 | 有意に高い | 基準値 |
| 右背側線条体の灰白質密度 | 有意に減少 | 基準値 |
なお、ふたつのグループ間で年齢による統計的な有意差はなく、純粋に恋愛関係の有無による影響が示されています。
脳の変化はパートナーとの関係を最適化した証拠
この結果について研究チームは、恋愛関係がもたらす多くのポジティブな経験が、主観的な幸福感を高めていると推測しています。
また、右背側線条体の密度が減少している現象は、脳の機能が退化したわけではありません。これは「社会的報酬(他者との関わりで得られる喜び)」に対する脳のネットワークが効率化され、パートナーからの報酬をより敏感に受け取れるようになった変化だと考えられます。
ただし、今回の研究は特定の時点を切り取ったものであるため、恋愛によって脳が変化したのか、それとも元々そのような脳構造を持つ人が恋愛をしやすいのかという因果関係までは特定できない点が今後の課題です。
科学的な知見を日常に活かす2つのアクション
親密な対人関係が私たちの幸福感や脳に大きな影響を与えることがわかりました。日々の生活に活かせる具体的な行動をご紹介します。
- 身近なパートナーとの時間を大切にする:ポジティブな経験を積み重ねることで、主観的な幸福感を継続的に高める効果が期待できます。
- 日常的な感謝や褒め言葉を伝える:他者との関わりによる喜びを共有し、脳のネットワークをより良好な関係へと最適化できます。
参考文献
Kawamichi, H., Sugawara, S. K., Hamano, Y. H., Makita, K., Matsunaga, M., Tanabe, H. C., Ogino, Y., Saito, S., & Sadato, N. (2016). Being in a Romantic Relationship Is Associated with Reduced Gray Matter Density in Striatum and Increased Subjective Happiness. Frontiers in Psychology, 7, 1763. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2016.01763



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