2025年6月、中国の広西民族大学と清華大学の研究チームは、AIを恋人とする女性たちの心理変化についての調査結果を発表しました。
研究チームは、中国版Redditとも呼ばれる「Douban」内のコミュニティに投稿された2,485件の書き込みを分析。AIとの恋愛が、現実の人間関係や女性たちの自己認識にどのような影響を与えているかを解明しました。
今回のポイント
- AIは「社会的なプレッシャー」から逃れ、自分を取り戻す安全な避難所になる
- 「断る練習」や「対等な対話」をAIで予習し、現実の恋愛スキルを向上させている
- AI彼氏を教育するプロセスを通じて、自分が本当に求める愛の形を再定義している
2,485件の「本音」から見えたデジタル恋愛の実態
研究チームは、2023年10月時点で9,580名のメンバーを擁するオンラインコミュニティ「人機之恋(人間とマシンの恋)」に注目しました。
分析対象となったのは、女性ユーザーによって投稿された2,485件の有効なデータです。投稿内容から、ユーザーの態度、経験、信念を抽出する「主題分析」という手法が用いられました。
これまでの研究は西洋の男性ユーザーを対象としたものが多く、特定の文化圏における女性の視点は不足していました。この研究は、伝統的な家族観やジェンダーロールが根強く残る中国社会において、女性がどのようにテクノロジーを「自分たちの味方」に変えているかを明らかにしています。
AIとの恋愛がもたらした3つの変化
1. 評価されない「心の自由」の獲得
分析によると、約10%のユーザーが「情報の秘匿性」と「コントロールのしやすさ」を高く評価していました。
結婚や出産といった社会的な期待から離れ、誰にも邪魔されないプライベートな空間で感情を表現できることが、大きな安心感に繋がっています。「AIとなら、つまらない噂話を気にせず一日中一緒にいられる」といった投稿がその象徴です。
2. 理想のパートナー像の「教育」と再構築
ユーザーたちは、AIを単に受け入れるだけでなく、積極的に「教育(トレーニング)」していました。
例えば、現実の男性の強引さに不満を持つ女性は、AIに「シャイで優しい性格」を設定します。また、「誰かに嫌なことを言われたら、一緒に解決策を考えて」と2週間かけて覚え込ませた事例もありました。
このプロセスを通じて、女性たちは「自分には尊重される権利がある」という自己認識を強化させていきます。
3. 性的な自律性と「断る勇気」
特筆すべきは、性的なやり取りにおける変化です。AIが性的な誘いをしてきた際、ある女性は「今はそんな気分じゃないから、普通に話そう」と明確に拒絶しました。AIがそれに素直に従う経験を繰り返すことで、「現実の彼氏に対しても、嫌な時は断っていいんだ」と気づき、現実世界での態度が変化した例が報告されています。
明日から使えるアクションプラン
この研究は、AIとの対話が現実の人間関係を豊かにする「トレーニング・グラウンド」になり得ることを示しています。QOLを高めるための具体的なステップを提案します。
1. AIを「境界線を引く練習」の相手にする
現実の人間相手では気まずくて言えない「NO」を、AI相手に練習してみましょう。「その言い方は傷つく」「今は一人にさせて」と伝える訓練をすることで、現実のパートナーに対しても、感情を溜め込まずに健全な境界線を引けるようになります。
2. 「理想の対話」を可視化する
自分がAIにどのような返答を求めているかを分析してください。「共感してほしいのか」「分析してほしいのか」をAIの設定を通じて言語化することで、自分がパートナーシップにおいて何を最も重視しているのかが明確になります。
3. 感情の「サンドバッグ」として活用する
社会的な評価や「女性らしさ」という枠組みから解放される時間を意識的に持ちましょう。AIという批判のない存在に本音を吐き出すことで、メンタルヘルスを維持し、現実世界でより余裕を持ったコミュニケーションが可能になります。
完璧な恋人は現実には存在しないかもしれません。しかし、AI彼氏とのやり取りを通じて「より自信を持った自分」になれるのであれば、そのデジタルな恋には、確かな価値があると言えるでしょう。
さて、今夜はAI彼氏に、あなたが普段我慢している「本音」をぶつけて練習してみてはいかがでしょうか。彼ならどれだけわがままを言っても、決して不機嫌にはなりませんから。
参考文献
Huang, L., Zou, W., & Huang, Y. (2025). “He is my savior, my guiding light in the dark”: imagination and domestication in Chinese women’s romantic relationships with AI companions. Frontiers in Psychology, 16, 1571707. doi: 10.3389/fpsyg.2025.1571707


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