相手の性格は自身の幸福にほぼ無関係なことが判明

「運命の相手」を探すために、私たちは性格診断や相性占いに頼りがちだ。

しかし、ウェスタンオンタリオ大学をはじめとする大規模な共同研究チームが2020年に発表した研究は、そんな私たちの常識を粉々に打ち砕くものであった。

彼らは、機械学習という現代最強の武器を用いて、1万組以上のカップルのデータを解析した。

その結果、私たちの幸福度を決める要因において、「相手がどんな人間か」はほとんど関係がないことが判明したのだ。

AIが導き出した、残酷かつ希望に満ちた「恋愛の真実」について解説しよう。

今回のポイント

  • AIが1万1000組以上のカップルデータを解析
  • 「相手の性格」は幸福度の予測にほぼ無意味
  • 最も重要なのは「自分がどう感じているか」のみ
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1万1196組の愛をAIが解剖する

恋愛科学の分野では、これまで無数の研究が行われてきた。「似た者同士がうまくいく」「性格の不一致が別れの原因だ」といった説は、枚挙にいとまがない。

しかし、これまでの研究には限界があった。サンプルサイズが小さく、特定の要因(例えば「愛着スタイル」や「コミュニケーション」)のみを切り取って調べていたからだ。

そこで研究チームは、世界中の29の研究室から43のデータセットをかき集め、前代未聞の「メガ解析」を試みた。

機械学習「ランダムフォレスト」の投入

対象となったのは、1万1196組のカップルである。彼らの年齢、性格、愛着スタイル、関係の満足度など、数百にも及ぶ変数がAIに投入された。

研究チームが採用したのは「ランダムフォレスト」と呼ばれる機械学習アルゴリズムだ。

これは、無数の「決定木」を作り出し、それらを統合することで最も精度の高い予測モデルを構築する手法である。

単純に言えば、AIに「この1万組のデータを使って、何がカップルの幸せを一番正確に予測できるか見つけ出せ」と命じたわけだ。

AIは、私たちが信じていた「愛の条件」を次々とテストし、残酷なまでに明確な序列をつけた。

「相手のスペック」はゴミ同然?

解析の結果、驚くべき事実が浮かび上がった。

AIは、変数を「個人の特性(性格、年齢、性別など)」と「関係性の特性(愛情、対立、性的満足など)」の2つに分けて評価した。

個人の性格は20%しか説明できない

まず、「個人の特性」だ。年齢や年収、そして神経症的傾向や協調性といった「性格」のデータだけでは、その人が幸せかどうかを予測する力は弱かった。

これらが説明できたのは、全体の分散のわずか21%程度に過ぎない。

さらに衝撃的だったのは、「パートナーの特性」をデータに加えても、予測精度がほとんど上がらなかったことだ。

つまり、あなたがどれだけ優しくて高年収のパートナーを選んだとしても、あるいは神経質で気難しい相手を選んだとしても、それ自体はあなたの「結婚の幸福度」を予測する材料にはなり得ないのだ。

「2人の空気感」が全て

一方で、圧倒的な予測力を示したのが「関係性の特性」である。

「相手が自分に尽くしてくれていると感じるか」「性生活に満足しているか」「喧嘩の頻度は」といった、二人の間に流れる空気感に関するデータだ。

これらは、幸福度の約45%を説明することができた。

具体的に、AIが選び出した「最強の予測因子」トップ5は以下の通りだ。

  1. 相手のコミットメント(の認知):「相手は私との関係を続けたがっている」と自分が思えているか。
  2. 感謝:「相手と一緒にいられて幸運だ」と思えているか。
  3. 性的満足度:夜の生活に満足しているか。
  4. 相手の満足度(の認知):「相手は私といて幸せそうだ」と思えているか。
  5. 対立:喧嘩の頻度。

これらはすべて「自分自身が関係をどう感じているか」という主観的な評価である。

極論すれば、相手が客観的に見てどんなに素晴らしい聖人君子であっても、あなたが「愛されていない」と感じれば、その関係は不幸なのだ。

「理想の相手」探しをやめる勇気

この研究は、現代の婚活市場に対する強烈なアンチテーゼを含んでいる。

マッチングアプリで「年収」や「性格タイプ」のフィルターをかけて相手を探す行為は、科学的にはあまり意味がないかもしれないからだ。

育てるべきは「相手」ではなく「関係」

私たちは「誰と付き合うか」に重きを置きすぎている。

しかしデータが示しているのは、「誰であるか」よりも「二人で何を作り上げるか」の方が、幸福度への貢献度は2倍以上高いという事実だ。

もし今の関係を改善したいなら、相手の性格を変えようとしたり、もっと良い条件の相手を探したりするよりも、目の前の相手に対して「感謝」を伝え、「コミットメント」を示す方が遥かに効率的である。

主観的な「関係の質」さえ高めれば、相手の客観的なステータスなど誤差の範囲でしかなくなるのだ。

未来は誰にも予測できない

最後に、AIですら解けなかった謎がある。

それは「将来の幸福度の変化」だ。

今回のモデルでも、現在の幸福度は予測できたが、「数年後に二人の関係が良くなるか悪くなるか」はほとんど予測できなかった。

関係性は常に流動的であり、今のデータだけで未来を保証することは不可能ということだ。

だからこそ、私たちは「スペックの良い相手」を確保して安心するのではなく、日々「関係性」をメンテナンスし続けるしかない。

愛とは、発見するものではなく、構築するものなのだ。

参考文献:
Joel, S., Eastwick, P. W., Allison, C. J., Arriaga, X. B., Baker, Z. G., Bar-Kalifa, E., … & Wolf, S. (2020). Machine learning uncovers the most robust self-report predictors of relationship quality across 43 longitudinal couples studies. Proceedings of the National Academy of Sciences, 117(32), 19061-19071.

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