1993年、聖心女子大学の松井豊氏(当時)による研究チームは、大学生の恋愛行動と意識に関する調査結果を発表しました。
この研究は、恋愛のスタイルが関係の進展とともにどのように変化するのかを、統計的な手法を用いて明らかにしています。
今回のポイント
- 「遊びの愛」はキスの段階でピークを迎え、その後急減する
- 関係が深まると情熱・嫉妬・献身の感情がセットで高まる
- 従来の「愛の円環モデル」は日本の学生には当てはまらない
研究の手法
調査は1989年10月、東京都内の大学(国立2校、私立4校)に通う大学生1,092名を対象に実施されました。
回答に不備のないデータのうち、現在異性のパートナー(恋人や好きな人)がいると回答した738名(男性378名、女性346名)のデータが分析に使用されました。
測定尺度:6つの恋愛スタイル
研究チームは、ジョン・アラン・リー(J. A. Lee)が提唱した「6つの愛の類型(ラブスタイル)」に基づき、日本人学生向けに作成された尺度(LETS-2)を使用しました。
6つのスタイルは以下の通りです。
- Eros(美への愛): ロマンティックな感情や外見を重視する一目惚れ型。
- Ludus(遊びの愛): 恋愛をゲームと捉え、執着せず複数の相手と付き合える型。
- Storge(友愛的な愛): 穏やかな友情から発展し、長い時間をかけて育まれる型。
- Pragma(実利的な愛): 相手の地位や条件を計算して選ぶ型。
- Mania(狂気的な愛): 独占欲が強く、嫉妬や悲哀などの激しい感情を伴う型。
- Agape(愛他的な愛): 相手の利益を優先し、自己犠牲を厭わない型。
恋愛の進展段階
参加者の現在の恋愛状況を、以下の5段階に分類しました。
- 第1段階: 会話をする、相談をする、プレゼントを贈る。
- 第2段階: デートをする、特別な用もないのに電話をする。
- 第3段階: 友人に紹介する、キスをしたり抱き合ったりする。
- 第4段階: 「恋人」として周囲に紹介する。
- 第5段階: 結婚の約束をする。
分析結果
3つの愛はセットで高まる
多次元尺度構成法による解析の結果、Eros(美への愛)、Mania(狂気的な愛)、Agape(愛他的な愛)の3つのスコアは、統計的に非常に近い位置にクラスター化(集合)することが判明しました。
これは、日本の大学生において、ロマンティックな感情、激しい嫉妬心、そして相手に尽くす気持ちは、別々の性質のものではなく、一つのまとまった「情熱的な恋愛感情」として機能していることを示しています。
実際に、恋愛の段階が第1段階から第5段階へ進むにつれて、これら3つのスコアは一貫して上昇しました。
「遊びの愛」はキスで頂点に達する
一方で、Ludus(遊びの愛)は独特な変化のカーブを描きました。
Ludusのスコアは、男女ともに第1段階(会話)から上昇し、第3段階(キス・抱擁)でピークに達しました。
しかし、第4段階(恋人として紹介)以降では急激に低下しました。
具体的なスコア(平均値)の推移は以下の通りです。
- 男性: 第3段階 20.1 → 第5段階 14.6
- 女性: 第3段階 21.5 → 第5段階 13.6
これは、関係が公的な「恋人」や「婚約者」になるにつれて、ゲーム感覚で恋愛を楽しむ態度は消失することを示しています。
「友愛」は初期に高まり、婚約期に下がる
Storge(友愛的な愛)のスコアは、デートを始める第2段階で高まりを見せましたが、結婚を約束する第5段階では低下する傾向が見られました。
男性の場合、第2段階のスコアは19.0でしたが、第5段階では15.8まで低下しました。
また、Pragma(実利的な愛)に関しては、恋愛の段階が進んでもスコアに有意な変化は見られませんでした。
著者の考察
著者は分析結果から、リーが提唱した「愛の円環モデル(6つの愛が円状に配置され、対角線上の愛は対立するという説)」は、日本の大学生のデータとは一致しないと結論づけています。
データは円環状ではなく、Eros・Mania・Agapeを一つの頂点とする「四角形」あるいは「三角錐」のような構造を示唆しました。
著者は、現代の青年において、Eros(ロマン)、Mania(執着)、Agape(献身)はそれぞれ独立したタイプではなく、恋愛関係が深まるにつれて一般的に高まっていく共通の恋愛心理であると推測しています。
対照的に、Ludus(遊び)やStorge(友愛)は、関係の特定の段階で現れる独立した意識であると考えられます。
特にLudusが第3段階(身体的接触や親密な友人への紹介)でピークを迎える現象については、関係が深まる過渡期における特徴的な心理状態である可能性が示されています。
結び
本研究は、日本の大学生における恋愛感情は、関係の進展に伴い「遊び」の要素が減少し、ロマン・執着・献身が一体となって高まっていくことを実証しました。
参考文献
Matsui, Y. (1993). Love styles and developmental stages in romantic love. The Japanese Journal of Psychology, 64(5), 335-342.


コメント
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