愛着タイプで脳が変わる?「愛と性」の反応を科学が証明

2016年5月、中国の安徽大学の研究チームは、人の「愛着スタイル(対人関係の心理的な傾向)」が、愛や性に関する情報を受け取るときに脳にどのような影響を与えるかを調査し、学術誌『Frontiers in Psychology』に発表しました。

人間には「性欲」「ロマンチックな愛」「愛着」という3つの主要な感情・動機づけシステムがあると言われています。今回の研究では、脳波を測定する装置(ERP)を用いることで、私たちが無意識のうちにこれらの情報をどう処理し、個人の性格(愛着タイプ)によってその反応がどう変わるのかが数値として浮き彫りになりました。

今回のポイント

  • 脳は「愛」と「性」の画像を、わずか100ミリ秒台で明確に区別している
  • 「恐れ・回避型」の人は、性の刺激に対する脳の反応が有意に低い
  • 「不安型(没頭型)」の人は、他のタイプに比べて恋愛感情が極めて激しくなる
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研究の手法

安徽大学の研究チームは、恋愛経験のある健康な男女37名(男性17名、女性20名、平均年齢22.8歳)を対象に実験を行いました。

まず参加者は、自身の愛着スタイルを測定する「ECR(親密な関係における経験尺度)」、情熱的な愛の度合いを測る「PLS」、および性的な態度に関する質問票に回答しました。愛着スタイルは、以下の4つのグループに分類されました。

  • 安定型 (Secure): 7名
  • 恐れ・回避型 (Fearful): 17名
  • 不安型/没頭型 (Preoccupied): 9名
  • 拒絶・回避型 (Dismissing): 4名

その後、参加者は脳波を記録しながら5つのカテゴリー(SEX、LOVE、FRIEND、SPORT、NEUTRAL)の画像を次々と閲覧しました。画像の内容は、カップルの性的行為(SEX)、デートやキス(LOVE)、友人関係(FRIEND)、激しいスポーツ(SPORT)、風景(NEUTRAL)です。

研究チームは、画像を見てから数ミリ秒単位で発生する脳波成分(N1、N2、PSW)を分析し、愛着タイプによって脳の認識プロセスにどのような差が生じるのかを詳しく調べました。

結果(数値で示す)

1. 性の刺激は「生物学的な最優先事項」

脳波の分析により、脳は「ロマンチックな愛」よりも「性(セックス)」の画像に対して、より初期段階で強力に反応することが判明しました。画像提示から100〜200ミリ秒後に現れる「N1」という脳波成分は、SEX画像において他のカテゴリーよりも有意に大きく出現しました($p < 0.00$)。

これは、生存と繁殖に直結する性的な情報が、脳にとって優先度の高い「生物学的な刺激」として最速で処理されていることを示しています。

2. 愛着タイプによる認識のズレ

愛着スタイルによって、特に性の認識において脳の電圧に大きな差が見られました。脳の「前頭部」での測定結果において、「恐れ・回避型」の人は、性の画像に対する認識反応(N1、N2成分)が、安定型や拒絶・回避型の人よりも有意に低くなりました。

「恐れ・回避型」の人は性的関係に対して不安や嫌悪感を抱きやすい傾向があるため、脳がその情報を処理する際に抑制的に働いている可能性が示唆されました。

3. 不安型は最も「激しい愛」を抱く

質問票による行動データの解析では、不安型(没頭型)の人の情熱愛尺度(PLS)の合計点(平均 107.11)が、安定型(85.71)や恐れ・回避型(94.71)よりも有意に高いことが示されました($F(3,33) = 3.34, p < 0.05$)。

このタイプの人々は、パートナーに対して非常に表現豊かであり、時として執着的とも言えるほどの情熱を注ぐ傾向があることが数値からも実証されました。

著者の考察・結論

研究チームは、今回の結果について「個人の愛着スタイルが、脳内の『性欲(lust)』と『ロマンチックな愛(attraction)』のシステムを調整する役割を担っている」と推論しています。

特に興味深いのは、質問票の回答(陽性な愛の強さなど)と脳波の反応が必ずしも一致しなかった点です。著者は、中国のような保守的な文化圏では、性に関する本音をアンケートで答えにくい「社会的望ましさ」の影響が出る可能性があると指摘しています。しかし、脳波計を用いたERP技術であれば、本人が自覚していない、あるいは隠している無意識の反応を直接捉えることができると強調しています。

今後は、さらに複雑な刺激順序の影響を排除し、より精密に脳の情動処理回路を解明していく必要があると結論づけています。

私たちが抱く愛や性の感覚は、幼少期からの対人関係のクセによって、脳のレベルからすでに書き換えられているのかもしれません。

参考文献

Hou, J., Chen, X., Liu, J., Yao, F., Huang, J., Ndasauka, Y., Ma, R., Zhang, Y., Lan, J., Liu, L., & Fang, X. (2016). How Does Adult Attachment Affect Human Recognition of Love-related and Sex-related Stimuli: An ERP Study. Frontiers in Psychology, 7, 596. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2016.00596

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