「好き」は制御できる!失恋や倦怠期の救世主か

2016年8月、アメリカのミズーリ大学とオランダのエラスムス大学の研究チームは、科学の力で「恋愛感情の強さを意図的に変えられるか」を調査し、その驚きの結果を学術誌『PLOS ONE』に発表しました。

これまで、恋心は自分の意志ではどうにもできない「不随意なもの」だと信じられてきました。しかし今回の研究により、特定の思考トレーニングを行うことで、燃え上がりすぎた未練を断ち切ったり、冷めかけた愛情を取り戻したりすることが、脳科学的に可能であることが証明されました。

今回のポイント

  • 恋愛感情は「再評価」という思考法で、意図的に強めたり弱めたりできる
  • 相手の「欠点」を思い浮かべることで、科学的に執着心を減らすことが可能
  • 脳波の測定により、恋愛感情の制御が脳レベルで成功していることが確認された
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研究の手法

研究チームは、恋愛の「制御可能性」を検証するために2つのステップを踏みました。

まず、32名の恋をしている学生を対象にアンケートを行い、人々が普段どのような戦略で感情をコントロールしているかを分析しました。次に、20名の交際中の男女と、20名の最近失恋した男女(計40名、19歳〜26歳)を招き、本格的な脳波測定実験を行いました。

実験では、参加者に「恋人(または元恋人)」の写真を30枚提供してもらい、それを見ながら以下の2つのトレーニングを行いました。

1. 感情を高める「アップ・レギュレーション」

相手の好きなところ(「彼はとても面白い」など)や、幸せな未来(「いつか結婚するだろう」など)を積極的に考えるように指示しました。

2. 感情を抑える「ダウン・レギュレーション」

相手の嫌いなところ(「彼女は怠け者だ」など)や、ネガティブな未来(「いつか浮気されるかもしれない」など)を意識的に考えるよう指示しました。

これらを行っている最中の脳の反応を、LPP(後期陽性電位)と呼ばれる特定の脳波成分を指標として測定しました。LPPは、その対象が自分にとってどれだけ重要であるかを示す「脳の関心度」を表す数値です。

結果(数値で示す)

1. 人々の主観:「愛はコントロールできない」

事前の調査では、人々は恋愛のコントロールについて、9点満点中「4.5点」という、やや否定的な自己評価を下していました。つまり、多くの人が「自分の意思で愛を操作するのは難しい」と考えていたのです。

2. 脳波が示した驚きの変化

しかし、実際のトレーニングを行うと、脳は顕著に反応しました。ポジティブな面を強調する指示(アップ・レギュレーション)を受けた際、写真を見てからわずか300〜400ミリ秒という超短時間で、脳の重要度を示すLPP波形が有意に上昇しました。

逆に、ネガティブな面を意識する指示(ダウン・レギュレーション)を受けた場合、交際中のグループでは700〜3000ミリ秒の範囲でLPP波形が減少しました。これは、脳が相手に対して向けていた強い「関心」や「重要性」を、意図的に引き下げたことを意味します。

3. 自己申告による愛着の変化

参加者の実感としても、相手のネガティブな要素を考えるだけで、恋愛初期の燃え上がるような気持ち(情熱)だけでなく、深い結びつきを感じる「愛着」のスコアも有意に低下することが確認されました。

著者の考察・結論

研究を率いたSandra Langeslag氏は、「人々は恋愛を制御不能なものだと思い込んでいるが、実際には思考の転換(再評価)によって、その強さを自在に調整できる」と結論づけています。

研究チームは、この発見が以下の2つの場面で特に役立つと推測しています。

  • 失恋からの回復: 元恋人の短所に集中することで、不必要な執着心を減らし、次のステップへ進みやすくなる。
  • 関係の維持: パートナーの長所や輝かしい将来をあえて意識することで、マンネリ化を防ぎ、愛着を維持できる。

ただし、研究者はいくつかの注意点も示唆しています。感情を抑えるために相手の欠点ばかりを考えると、短期的には不快な気分になるリスクがあります。また、この効果がどれほど長く続くのか、習慣化させるにはどうすればよいかについては、今後のさらなる研究が必要であるとしています。

愛を「ただ耐えるもの」から「主体的にコントロールするもの」へと変える心理学の可能性が示されたといえます。

参考文献

Langeslag, S. J. E., & van Strien, J. W. (2016). Regulation of Romantic Love Feelings: Preconceptions, Strategies, and Feasibility. PLOS ONE, 11(8), e0161087. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0161087

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