「恋愛感情は制御可能か」米大学調査

2019年5月、ミズーリ大学セントルイス校の心理学部研究チームは、人々が「自分の恋愛感情を意図的に強めたり弱めたりできる」と考えているかについての調査結果を発表しました。

多くの人が「愛はコントロールできないもの」と考えがちですが、実際の人々の認識を科学的に測定した研究です。

今回のポイント

  • 愛を「強める」ことは可能だが「弱める」のは難しいと認識されている
  • ゼロから愛を「始める」ことや、完全に「止める」ことは不可能と考えられている
  • 熱烈な恋心よりも、穏やかな愛着の方が制御しやすいと考えられている
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研究の手法

この研究には、ミズーリ大学セントルイス校の学生286名が参加しました。

参加者の平均年齢は22.1歳で、女性が230名、男性が52名、その他が4名という構成です。

参加者の約63%にあたる180名は、調査時点で「恋愛中である」と回答しました。

研究チームはオンラインアンケートシステム「Qualtrics」を使用し、参加者に一連の質問を行いました。

3つの愛と4つの感情

参加者は、以下の「3種類の愛」と「4種類の基本感情」について、自分がどれくらい制御できると思うかを回答しました。

【3種類の愛】

研究では、恋愛感情を以下の3つに定義して分類しました。

  • 熱愛(Infatuation):特定の相手に対する圧倒的な情熱。ときめきや緊張を伴う初期の感情。
  • 愛着(Attachment):相手との精神的な結びつきや安らぎを感じる感情。
  • 性的欲求(Sexual desire):性的満足への渇望。

【4種類の基本感情】

比較対象として、幸福、悲しみ、恐怖、怒りについても調査しました。

測定方法

参加者は、「私は〇〇の感情を強めることができる」「私は〇〇の感情を弱めることができる」といった記述に対し、1(全くそう思わない)から9(完全にそう思う)までの9段階で評価しました。

数値が5(中立)より高ければ「制御できる」と考えており、5より低ければ「制御できない」と考えていることを示します。

また、普段から感情をどの程度コントロールしようとしているかを測る「感情制御尺度(ERQ)」への回答も求められました。

結果

愛を強めること vs 弱めること

データ分析の結果、参加者は一般的な恋愛感情について「強めること」は可能だが、「弱めること」は難しいと考えていることが明らかになりました。

「愛を強める能力」の平均スコアは6.4であり、中立点の5を有意に上回りました。

一方、「愛を弱める能力」の平均スコアは4.4であり、中立点の5を有意に下回りました。

つまり、人々は愛を燃え上がらせることはできても、冷ますことはできないと認識しています。

愛の種類による違い

愛の種類別に見ると、「熱愛(Infatuation)」の制御に対する認識が最も低い結果となりました。

「感情を強める」ことに関して、熱愛のスコアは平均5.8でしたが、愛着は平均6.7、性的欲求は平均6.3でした。

参加者は、情熱的な恋心よりも、穏やかな愛着関係の方がコントロールしやすいと考えています。

開始と停止の不可能性

感情の強弱ではなく、ゼロから感情を生み出す「開始」と、感情を完全になくす「停止」については、さらに否定的な認識が示されました。

熱愛を「開始する」能力のスコアは平均3.8、「停止する」能力は平均4.4といずれも低い数値です。

愛着についても同様に、開始(平均4.1)、停止(平均4.2)ともに不可能であると認識されています。

認知再評価との相関

個人の性格特性との関連では、「認知再評価(物事の捉え方を変えて感情を調整すること)」を習慣的に行っている人ほど、恋愛感情も制御できると考える傾向がありました。

認知再評価のスコアが高い参加者は、熱愛、愛着、性的欲求のいずれにおいても、それを「強める」および「弱める」能力が高いと自己評価しており、相関係数は0.20から0.26の正の相関を示しました。

著者の考察

研究チームは、人々の認識と過去の実証研究の結果との間に「ズレ」があることを指摘しています。

過去の研究では、指導を受ければ人々は恋愛感情を意図的に減少(ダウンレギュレーション)させることが可能であると示されています。

しかし今回の調査では、人々は「愛を弱めることはできない」と認識していることがわかりました。

著者は、この誤った認識が人々のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があると懸念しています。

感情は制御できないと思い込むと、実際に制御しようとする努力を放棄し、失恋などのネガティブな状況から立ち直るのを遅らせる要因になり得ます。

研究チームは、恋愛感情も適切な方法を用いれば制御可能であるという知識(心理教育)を広めることが、人々の精神的健康に寄与する可能性があると結論付けています。

参考文献

Surti, K., & Langeslag, S. J. E. (2019). Perceived ability to regulate love. PLoS ONE, 14(5), e0216523.

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