子供が2人を超えると夫は「夫婦仲」で人生の意義を感じないと判明

「家族こそが人生の宝」「夫婦円満こそが幸福の鍵」

私たちはそう信じて疑わない。実際、多くの心理学研究が、良好なパートナーシップが人生に深い意義(Meaning in Life)をもたらすことを証明してきた。

しかし、南カリフォルニア大学の研究チームが2024年に発表した論文は、その常識に「ある条件」が存在することを突きつけた。

驚くべきことに、男性の場合、子供の数が増えるにつれて「妻との関係の良し悪し」が人生の意義に影響しなくなることが判明したのだ。特に子供が2人以上になると、その傾向は決定的なものとなる。

これは、父親になった男性の心が、妻から離れてしまったことを意味するのだろうか? データが語る「男の生きがい」の残酷な真実に迫ろう。

今回のポイント

  • 夫婦仲の良さは、女性よりも「男性」の人生の意義に強く影響する
  • しかし男性は、子供が2人以上になると夫婦仲と人生の意義の関連が消滅する
  • 女性は子供の数に関わらず、夫婦仲が良いほど人生の意義を感じる
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パンデミック下の473人を調査した「生きがい」の解剖

研究チームは、人生の意義において「家族」がどのような役割を果たしているかを解明するため、アメリカ国内の成人473名を対象に調査を行った。

時期は2020年12月から2021年2月。そう、新型コロナウイルスのパンデミック真っ只中である。

ロックダウンや外出制限により、外部との接触が遮断され、家族関係の濃度が極限まで高まっていた時期だ。これほど「家族」が個人の精神状態に与える影響を測定するのに適した環境はないだろう。

「人生の意義」と「夫婦仲」の相関を測る

参加者の平均年齢は34.5歳。53.3%が女性で、全員がパートナーと同居している。研究チームは彼らに対し、以下の要素を数値化させた。

  • 人生の意義(Meaning in Life):自分の人生に目的や重要性を感じているか。
  • 関係の質(Relationship Quality):パートナーとの関係は良好か、幸せか。
  • 子供の数:同居している18歳未満の子供は何人か。

通常であれば、「夫婦仲が良いほど、人生に意義を感じるだろう」と予測できる。そして「子供がいるほど、生きがいが増すだろう」とも考えられる。

実際に全体の結果を見れば、その予測は正しかった。しかし、データを「性別」と「子供の数」で分解したとき、研究者たちは奇妙な現象に気づいたのである。

男にとって「妻」は世界そのものだった…子供が生まれるまでは

まず明らかになったのは、「男性のほうが女性よりも、パートナーシップに依存している」という事実だ。

子供がいない、あるいは少ない段階では、男性の「人生の意義」スコアは、夫婦仲の良さと強烈に連動していた。つまり、夫にとって「妻との関係が良いこと」は、自分の人生が生きるに値すると感じるための絶対条件に近いのだ。

対照的に、女性はそこまで夫に依存していない。もちろん夫婦仲が良いに越したことはないが、女性は友人や他の社会的ネットワークからも「生きがい」を摂取できるため、夫との関係が悪くても、男性ほど人生の意義を見失わない傾向があった。

「子供2人」が夫を変える分岐点

しかし、子供の数が増えるにつれて、この構造は劇的に変化する。統計解析の結果は、男女間で残酷なまでのコントラストを描き出した。

まず、女性の場合を見てみよう。彼女たちにとって、子供が0人であろうと、1人であろうと、あるいは2人以上の大家族であろうと、ルールは極めて単純明快だった。「夫婦仲が良ければ良いほど、人生の意義を強く感じる」。この法則は、子供の数に全く左右されず、一貫して成立していた。

問題は男性だ。子供がいない段階では、男性は女性以上に「妻との関係」に人生の意義を依存している。子供が1人生まれた段階でも、その影響力はやや弱まるものの、まだ明確に保たれていた。

だが、子供が2人以上になった瞬間、そのリンクは断ち切られる。

驚くべきことに、子供が2人以上の男性グループでは、統計的に「夫婦仲の良し悪し」と「人生の意義」の関連性が完全に消滅していたのだ。

つまり、妻とラブラブであろうが、冷めきっていようが、彼らが感じる「生きていく意義」の総量には、統計上1ミリも影響しなくなっていたのである。かつてあれほど妻の笑顔に依存していた夫たちは、2人目の子供が生まれたあたりで、別の生き物に進化してしまったかのようだ。

なぜ夫は妻を見なくなったのか?

この結果を見て「夫は妻を愛さなくなった」と結論づけるのは早計だ。研究チームは、より生物学的・社会的な役割の変化が原因だと推測している。

「配偶者」から「提供者」へのシフト

男性にとって、家族が増えることは「守るべき群れ」が大きくなることを意味する。子供が複数になると、男性の中で「良き夫」であることよりも、「家族を養う提供者(Provider)」としてのアイデンティティが圧倒的に強くなる可能性がある。

妻という個別のパートナーとのロマンスよりも、「家族全体」というユニットを維持・管理することに人生の意義を見出し始めるのだ。妻はそのユニットの一部として統合され、もはや「妻との関係性」単体では、彼の人生の意義を左右する要因にならなくなる。

一方、女性にとって「母親」の役割と「妻」の役割は、機能的に別個のものとして共存しやすい。だからこそ、母親になってもなお、夫とのパートナーシップの質が人生の喜びに直結し続けるのだ。

日常への応用:すれ違いを防ぐために

この研究は、子育て世代の夫婦にしばしば生じる「温度差」の正体を教えてくれる。

妻は「もっと夫婦の時間を大切にしたい」「私を見てほしい」と願い、それが満たされないと人生の充実感を失う。一方で夫は、必死に働いて家族を養っていることに十分な「生きがい」を感じており、夫婦関係のケアがおろそかになっても、自分自身のメンタルは充実しているため危機感を持てない。

このズレは、愛情の欠如ではなく、「何に人生の意義を感じるか」という回路が、子供の数によって書き換わってしまった結果なのだ。

妻は、夫が「家族全体」を見るモードに入ったことを理解する必要があるかもしれない。そして夫は、妻が依然として「あなた個人」との繋がりを生きがいにしている事実を、知っておくべきだろう。

夫があなたを見なくなったわけではない。彼の中であなたが「最愛の恋人」から「群れの一部」に昇格(あるいは降格?)しただけなのだ。


Reference:
Gold, A. I., Ryjova, Y., Aviv, E. C., Corner, G. W., Rasmussen, H. F., Kim, Y., & Margolin, G. (2024). Social contributions to meaning in life: the role of romantic relationship quality, parenting, and gender. Frontiers in Psychology, 15, 1349642. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1349642

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