「初キスの理想」が高いほど愛は深まると判明

「ファーストキスはレモンの味」などという昭和的な表現はさておき、あなたは初めてのキスにどんな幻想を抱いていただろうか?

「世界がスローモーションになる」「電流が走る」「鐘の音が聞こえる」

少女漫画やドラマの見過ぎだと笑うのは簡単だ。現実のキスなど、歯が当たったり、鼻の角度が気になったりと、案外不格好なものだからである。

しかし、そんな冷めた常識を覆す研究結果が報告された。

米国ミネソタ大学ダルース校(University of Minnesota Duluth)の研究チームが2023年12月に発表した研究によると、「ファーストキスに対する理想(妄想)が強ければ強いほど、現在のパートナーへの愛が深まる」という驚きの事実が明らかになったのだ。

さらに興味深いことに、その効果は「実際に理想通りのキスができたかどうか」よりも、「どれだけ強く理想を抱いていたか」の方に強く表れたという。

今回は、愛の力を科学的に解き明かす「ロマンチックな勘違い」の効用について解説しよう。

今回のポイント

  • 「初キスの理想」を測定する尺度が開発された
  • 理想が高い人ほど、現在の恋愛満足度が高い
  • 現実のキスの質より「期待値」そのものが重要
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ファーストキスに「魔法」を求める大人たち

これまで心理学の世界では、「過度な期待は失望の母である」というのが定説だった。相手に理想を押し付けすぎれば、現実とのギャップに苦しみ、関係が悪化すると考えられてきたからだ。

しかし、今回の研究チームはこの常識に疑問を呈した。特に「キス」という象徴的な行為においては、ロマンチックな信念が良い方向に働くのではないかと考えたのだ。

「ときめき」を数値化する試み

研究チームはまず、人々がファーストキスに何を期待しているのかを数値化するため、「ファーストキス信念尺度(First Kiss Beliefs Scale: FKBS)」という新たな測定ツールを開発した。

研究に参加したのは、平均年齢35歳前後の米国成人208名(研究1)と234名(研究2)。彼らの多くは既婚者や長期的なパートナーがいる人々だ。

参加者は以下のような、まるでポエムのような質問項目に、どれくらい同意するかを7段階で回答した。

  • 「ファーストキスで『魔法』を感じるべきだ」
  • 「キスをした瞬間、世界がぼやけて見えるべきだ」
  • 「キスで『花火』が打ち上がるような感覚があるべきだ」

普通に考えれば、これらは現実離れした期待である。しかし、驚くべきことに参加者の平均スコアは7点満点中5.39点と非常に高く、多くの大人が「キスは魔法のようなものであるべき」という強い信念を持っていたことが判明した。

さらに研究2では、より踏み込んだ調査が行われた。参加者に対し、「実際のファーストキスはどうだったか?」を尋ね、期待と現実のギャップ(Unmet expectations)を計算したのだ。

つまり、「理想(妄想)」と「現実(実績)」のどちらが、現在のパートナーへの「愛」を予測するのかを競わせるという、なんともシビアな実験を行ったわけである。

現実は「妄想」に勝てない

分析の結果は、ロマンチストたちに勇気を与えるものだった。

まず、ファーストキスに対する理想が強い人ほど、現在のパートナーを深く愛していることが統計的に示されたのだ。

相関係数(2つの事柄の関係の強さを示す数値)は約0.25〜0.28。これは心理学の行動データとしては無視できない有意な数値である。

そして何より衝撃的だったのが、研究2の結果である。「理想」と「現実のギャップ」、どちらが愛の深さに関係しているかを回帰分析という手法で比較したところ、勝者は圧倒的に「理想」の方だった。

ガッカリしても愛は冷めない?

具体的には、「理想的な信念」は恋愛感情の分散(ばらつき)の約10%を独自に説明できたのに対し、「期待外れだったかどうか」は7%しか説明できなかった。

これは何を意味するか。単純に言えば、「実際にキスが素晴らしかったかどうか」よりも、「キスは素晴らしいものであるべきだと信じているか」の方が、愛を持続させる上で重要だということだ。

たとえ現実のキスが多少ぎこちなくても、その背景にある「理想」を強く持っている人は、脳内でその体験をポジティブに変換し、関係全体の満足度を高めている可能性がある。

不安な人ほど「おとぎ話」が必要

さらにこの研究は、「愛着スタイル(人との絆の結び方)」による違いも発見している。

特に「不安型愛着(相手に嫌われないか常に不安になるタイプ)」の傾向が強い人において、この効果は顕著だった。不安型の人は、高い理想を持つことで、パートナーからの愛情を確認し、関係の安定性を担保しようとする心理が働くようだ。

逆に、「安定型(情緒が安定しているタイプ)」の人は、理想が高かろうが低かろうが、パートナーへの愛の深さはそれほど変わらなかった。

つまり、「おとぎ話のようなキス」を信じることは、恋愛に不安を感じやすい人にとっての、一種の精神安定剤(セキュリティブランケット)として機能しているのである。

恋愛において「中二病」は最強の武器になる

この研究結果は、私たちの恋愛観に一つの示唆を与えてくれる。

私たちは大人になるにつれ、「現実はそんなに甘くない」「ドラマみたいな恋はない」と冷めた目で世界を見がちだ。しかし、こと恋愛に関しては、そのリアリズムは必ずしも正解ではない。

むしろ「運命のキス」や「永遠の愛」を信じ続ける「中二病」的なロマンチシズムこそが、関係を長続きさせるための最強の武器になり得るのだ。

ポジティブな「脳内補正」を活用せよ

もしあなたがパートナーとの関係にマンネリを感じているなら、あえて「理想」を高く持ち直してみるといいかもしれない。

「たかがキス」と思わず、「このキスには世界を変える力がある(はずだ)」と思い込んでみる。そうすることで、脳は勝手にドーパミンを放出し、目の前の相手を「運命の人」として再認識してくれるかもしれない。

現実を直視しすぎる必要はない。恋愛において、事実は解釈に従属するのだから。

結局のところ、ディズニー映画は私たちを騙していたのではなく、恋愛をサバイブするための高度なライフハックを教えてくれていたのかもしれない。

Reference:
Thompson, A. E., Hill, M. R., & Record, J. M. (2023). Can a kiss conquer all? The predictive utility of idealized first kiss beliefs on reports of romantic love among U.S. adults. Frontiers in Psychology, 14, 1256423. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1256423

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