「タダ飯目的」デートの深層
– 調査対象の女性の約3割が、食事をおごらせる目的で興味のない相手とデートした経験を持つ。
– この行動は「ダークトライアド」と呼ばれる、ナルシシズムなどの反社会的性格特性と強く相関する。
– 伝統的な性役割への支持が強いほど、この搾取的な戦略を肯定する傾向が確認された。
はじめに:交際に潜む「食」と「搾取」の心理
恋愛感情がないにもかかわらず、無料の食事にありつくためだけにデートをする。
通称「フーディー・コール(Foodie Call)」と呼ばれるこの行動は、単なるマナー違反や若気の至りとして片付けられるべきものではない。
近年の社会心理学研究により、この行動の裏側には極めて冷徹な性格特性と、歪んだジェンダー観が潜んでいることが明らかになった。
米国アズサ・パシフィック大学とカリフォルニア大学マーセド校の共同研究チームは、恋愛における偽りと搾取行動に関する包括的な調査を実施した。
彼らが焦点を当てたのは、対人関係において自己の利益を最大化しようとする人間の暗部である。
本稿では、この研究が暴き出した「恋愛市場におけるフリーライダー(ただ乗り)」の実態と、その行動を駆動する心理的メカニズムについて詳報する。
研究手法の検証:二段階の大規模調査
研究チームは、この現象の頻度と性格的要因を特定するため、二つの異なる実験構成を採用した。
データの客観性を確保するため、サンプルは異なる属性の集団から抽出されている。
第一実験:実態の把握
第一の調査では、一般社会におけるフーディー・コールの普及率が測定された。
– 参加者:異性愛者の女性820名。
– 手法:オンライン調査を用い、過去のデート経験、性格特性、ジェンダー観、フーディー・コールへの許容度を回答させた。
ここでは、自身の過去の行動だけでなく、「そのような行動を社会的にどう評価するか」という規範意識も問われている。
第二実験:性格特性との連結
第二の調査では、より詳細な性格分析が行われた。
– 参加者:米国の女性357名。
– 手法:第一実験と同様の質問に加え、「ダークトライアド」と呼ばれる3つの悪的性格特性を測定する尺度を用いた詳細な分析を実施。
これらの参加者は、すべて匿名性が担保された状態で、自身の「社会的に推奨されない行動」について自己申告を行っている。
具体的データの提示:3つの暗黒特性との相関
実験の結果、驚くべき数値が浮き彫りとなった。
まず、第一実験において、参加者の約23パーセントが「過去にフーディー・コールを行った経験がある」と回答した。
さらに、第二実験においては、その数値は33パーセントにまで上昇した。
つまり、およそ3人に1人から4人に1人の女性が、食事目的でのデート経験を有しているという事実が判明したのである。
ダークトライアドとの有意な関連
さらに重要な発見は、この行動をとる個人の性格特性にある。
研究チームは、フーディー・コールを行う傾向と、以下の「ダークトライアド(暗黒の三要素)」との間に、統計的に有意な正の相関を確認した。
1. マキャベリアニズム(Machiavellianism)
他人を操作し、自己の目的のために利用しようとする冷徹な特性。
このスコアが高い層ほど、デート相手を「資源」と見なす傾向が強かった。
2. ナルシシズム(Narcissism)
自己愛が極端に強く、自分は特別扱いされるべきだと信じる特性。
「自分には食事をおごられる権利がある」という特権意識が行動を後押ししている。
3. サイコパシー(Psychopathy)
他者への共感が欠如し、衝動的な行動をとる特性。
相手の時間や金銭を浪費させることへの罪悪感の欠如が、行動のハードルを下げている。
伝統的ジェンダー観のパラドックス
また、データはもう一つの興味深い相関を示した。
「男性がデート代を支払うべきである」「女性は守られるべきである」といった伝統的な性役割を強く支持する女性ほど、フーディー・コールを行う傾向が高かったのである。
通常、伝統的な価値観は道徳的規範と結びつくと考えられがちだ。
しかし、この文脈においては「男性がおごるのは当然の義務」という認識が、「義務を果たす男性を利用することに問題はない」という論理への飛躍を生んでいる。
具体的には、フーディー・コール経験者は未経験者に比べ、これらの性格特性およびジェンダー観のスコアが有意に高かった。
彼女たちの多くにとって、この行動は単なる「節約術」ではなく、他者を利用して自己利益を得るための確立された対人戦略の一部となっていることが示唆された。
結果からの発展:我々がとるべき行動
この研究は、デートにおける金銭負担の問題が、単なる経済的な駆け引き以上のものであることを示している。
相手が「食事」のみに固執する場合や、関係性の構築よりも物質的な提供を過度に期待する場合、そこには性格的な「暗黒面」が関与している可能性を疑う余地がある。
重要なのは、一回の食事代の損失ではなく、その背後にある「他者を操作しても構わない」という価値観を見抜くことだ。
初期のデート段階において、相手が対等な関係を築こうとしているか、それとも一方的な奉仕を求めているかを観察することは、将来的な搾取関係を回避するための有効なリトマス試験紙となるだろう。
参考文献
Collisson, B., Harig, T. A., & Harig, K. L. (2020). Foodie Calls: Dating for a Free Meal (and Personality Traits). Social Psychological and Personality Science, 11(3), 425–432. https://doi.org/10.1177/1948550619870787











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