恋人いらない=未熟は誤解?心理学が解明した「5つのタイプ」と成熟度

「若者の恋愛離れ」が叫ばれて久しい昨今、あえて「恋人は欲しくない」と答える若者が増えています。

世間では「自信がないからでは?」「面倒なだけでは?」とネガティブに捉えられがちですが、実はその理由は一様ではありません。

和光大学の高坂康雅氏による2013年の研究では、大学生を対象に詳細な調査を行い、「恋人を欲しくない」と考える若者を5つのタイプに分類しました。その結果、ある特定のグループは、むしろ精神的に非常に成熟していることが明らかになったのです。

この記事では、心理学の視点から「恋人がいらない理由」と「心の成熟度」の関係を分かりやすく解説します。

今回のポイント

  • 「恋人が欲しくない」理由は、負担回避や自信のなさなど6つに大別される
  • 理由に基づくと、若者は「拒否群」や「楽観予期群」など5つのタイプに分かれる
  • 「自然にできる」と考える楽観予期群は、自我発達のレベルが高い
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1500人以上の大学生から「恋愛不要群」を抽出・分析

この研究では、4年制大学に通う大学生1,532名(男子592名、女子938名)を対象に調査を行いました。

まず、現在の恋愛状況について質問し、以下の3つのグループに分類しました。

  • 恋愛群:現在、恋人がいる学生
  • 恋愛希求群:恋人はいないが、欲しいと思っている学生
  • 恋愛不要群:恋人はおらず、欲しいとも思わない学生

分析の中心となったのは、全体の約20%(307名)を占めた「恋愛不要群」です。

彼らに対して「なぜ恋人が欲しくないのか」という45項目の質問を行い、統計的な手法である因子分析(いんしぶんせき)を用いて、その理由の構造を明らかにしました。

さらに、彼らの心の成長度合いを測るために、エリクソンという心理学者が提唱した理論に基づく「S-ESDS」という尺度を使用しました。

これは、「基本的信頼感(人を信じられるか)」「アイデンティティ(自分は何者か)」といった、心がどれだけ大人になっているか(自我発達)を数値化するものです。

結果1:「恋人がいらない」理由は6つの心理に集約される

分析の結果、「恋人が欲しくない」という心理は、以下の6つの大きな要因(理由)で構成されていることが分かりました。

  1. 負担回避:「面倒くさい」「お金がかかる」「自由がなくなる」など、コストを避けたい気持ち。
  2. 自信なし:「自分に魅力がない」「異性との付き合い方がわからない」という自信の欠如。
  3. 充実生活:「趣味や勉強が忙しい」「友達と遊ぶだけで十分」という、現状への満足感。
  4. 意義不明:「恋愛の価値がわからない」「意味を見出せない」という感覚。
  5. 過去のひきずり:「元恋人が忘れられない」「過去の失恋がトラウマ」という未練や傷。
  6. 楽観的予期:「そのうち自然にできる」「焦らなくてもいい」という将来への楽観。

一口に「いらない」と言っても、ネガティブな理由(自信なし・負担回避)から、ポジティブあるいは受動的な理由(充実生活・楽観予期)まで様々であることが分かります。

結果2:恋愛不要派は「未熟な人」と「成熟した人」に分かれる

さらに研究チームは、これらの理由の組み合わせパターンによって、「恋人がいらない人たち」を5つのタイプ(クラスター)に分類しました。

そして、それぞれのタイプと「心の成熟度(自我発達)」の関係を分析したところ、驚きの結果が出ました。

タイプ1:恋愛拒否群(負担回避・意義不明が強い)

「恋愛は面倒だし意味がわからない」と強く感じているグループです。このグループは、自我発達の得点が全体的に低い傾向にありました。対人関係の煩わしさを避け、親密になることを恐れている可能性があります。

タイプ2:自信なし群(自信のなさが突出)

「自分はモテない」「どう接していいかわからない」と感じているグループです。こちらも自我発達の程度が低いことが示されました。自分自身への確信が持てないため、他者と深く関わることに臆病になっていると考えられます。

タイプ3:楽観予期群(自然な流れに任せる)

「今は充実しているし、恋人はそのうち自然にできるだろう」と構えているグループです。

注目すべきは、このグループの自我発達の程度が最も高かったという点です。

具体的には、「基本的信頼感(世界や他人を信じる力)」や「アイデンティティ達成(自分を持っている感覚)」の数値が、他のグループよりも統計的に有意に高い結果となりました。

その他のタイプ

過去の恋愛を引きずっている「ひきずり群」は、自我発達レベルは比較的高めでした。一度は深い関係を築いた経験があるためと考えられます。特に明確な理由がない「理由なし群」は、中程度の発達レベルでした。

考察:「待てる」ことは、信頼の証である

従来のエリクソンの発達理論では、「アイデンティティ(自分らしさ)が確立していない若者は、親密な関係を恐れて避ける」とされてきました。

今回の結果における「恋愛拒否群」や「自信なし群」の自我発達が低かったことは、この理論を裏付けています。彼らは自分への自信のなさから、傷つくリスクのある恋愛を避けていると言えます。

しかし、「楽観予期群」の結果は、従来のネガティブなイメージを覆すものでした。

著者はこの結果について、以下のように考察しています。

  • 彼らは「基本的信頼感」が高いため、将来に対してポジティブな展望を持てている。
  • 「今すぐにガツガツしなくても、いずれ自分にふさわしい相手と巡り会える」という余裕は、心が安定しているからこそ生まれる。
  • 現代においては、必ずしも「恋愛に積極的であること」だけが成熟の証ではなく、自分のペースで人生を歩めることも成熟の一つの形である。

つまり、彼らの「恋人がいらない」は拒絶や逃避ではなく、「自分の人生への信頼」に基づいた選択(あるいは保留)である可能性が高いのです。

なお、本研究の限界点として、なぜ自我が確立している彼らが、現時点では異性との親密さを求めていないのかという具体的な心理メカニズムまでは解明されていない点が挙げられており、今後のさらなる調査が必要とされています。

「恋人がいらない」という言葉の裏には、自信のなさだけでなく、将来への揺るぎない信頼が隠れている場合もあることが分かりました。

参考文献

高坂康雅 (2013). 青年期における“恋人を欲しいと思わない”理由と自我発達との関連. 発達心理学研究, 24(3), 284-294.

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