若者834人の恋愛を分析!満足度が愛の架け橋になると判明

ペルーのウニベルシダ・プリバダ・デル・ノルテのホセ・ベンチュラ・レオン氏らの研究チームが2023年5月、恋愛関係における情動と行動の相互作用を解明する研究を発表した。研究チームは、恋愛における「愛」「嫉妬」「満足度」「暴力」という4つの要素が、個人の心の中でどのように結びついているのかを「ネットワーク分析」という最新の手法を用いて調査したのだ。その結果、関係の維持において「満足度」がすべての要素を繋ぐ中心的な役割を果たしていることが明らかになった。

今回のポイント

  • 関係の満足度が、愛・嫉妬・暴力を結びつける中心的なハブとして機能している
  • 親密さとコミットメントが満足度に直結し、暴力は満足度を著しく低下させる
  • 男性は女性に比べ、暴力と情熱、嫉妬とコミットメントが強く結びつく傾向がある
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若者834人の恋愛心理を「ネットワーク」で可視化

今回の研究には、18歳から38歳までのペルー人の若者834名が参加した。内訳は女性が646名(77.50%)、男性が188名(22.50%)であり、全員が少なくとも3ヶ月以上の交際期間を持つカップルである。研究チームは、参加者に対して「スタンバーグの愛の尺度(STLS-R)」「簡易嫉妬尺度(BJS)」「関係評価尺度(RAS)」「女性虐待スクリーニングツール(WAST-2)」という4つの心理検査を実施した。

特筆すべきは、その分析手法だ。従来の心理学では「満足度」や「愛」といった概念を、目に見えない共通の心理的要因から生じる結果として扱ってきた。しかし、本研究で採用された「ネットワーク分析」は、それぞれの心理的属性を互いに影響し合う「ノード(点)」として扱い、その間の繋がりを「エッジ(線)」として描き出す手法である。これにより、どの要素がネットワークの中で最も影響力を持っているのか、あるいは異なる要素間を繋ぐ「ブリッジ(架け橋)」になっているのかを数値化できるのだ。

測定された4つの主要な変数

分析の対象となった変数は以下の通りである。

1. 愛:親密さ、情熱、コミットメント(意思決定)の3要素で構成される。
2. 嫉妬:パートナーの行動に対する不安や拒絶反応を測定する。
3. 満足度:現在の関係に対する主観的な充足感を評価する。
4. 暴力:身体的、心理的、あるいは性的支配の試みを特定する。

これらの変数が複雑に絡み合う中で、何が最も重要な役割を果たしているのかが、ネットワーク分析によって浮き彫りにされたのである。

判明した「満足度」という強力なハブ

分析の結果、全参加者のネットワークにおいて「関係の満足度」が最も高い中心性(Bridge Strength)を持つことが判明した。これは、満足度が愛の要素(親密さ、コミットメント)と負の要素(暴力)の両方を橋渡しする、極めて重要な中継地点であることを意味している。

具体的な数値を見ると、コミットメントと満足度の相関は0.31、親密さと満足度の相関は0.30と、正の相関が認められた。つまり、相手を愛し続けようとする意志や、心理的な近さが満足度を高めているわけだ。一方で、暴力と満足度の相関はマイナス0.19であり、暴力が存在する環境では、親密さや満足度が著しく損なわれる実態がデータとして示された。

男女で異なる「嫉妬」と「情熱」の結びつき

研究チームが男女別にネットワークを比較したところ、興味深い違いが見つかった。全体的なネットワーク構造は男女で似通っているものの、個別の結びつきの強さには明確な差異があったのだ。驚くべきことに、男性のグループにおいてのみ、「暴力と情熱(r=0.23)」および「嫉妬とコミットメント(r=0.11)」に正の相関が確認された。

これは、一部の男性が「支配やコントロール(暴力)」を「情熱的な愛」と混同していたり、「嫉妬」を「相手への忠誠心(コミットメント)」の証拠として捉えていたりする可能性を示唆している。対して女性のネットワークでは、これらの相関は見られなかった。男性におけるこのような認知の歪みが、パートナーへの暴力の引き金になりやすいという点に、研究チームは注意を促している。

この研究をどう恋愛に活かすか?

この研究結果は、私たちの日常生活における恋愛関係のメンテナンスに非常に具体的な指針を与えてくれる。まず、関係が悪化していると感じたとき、単に「愛しているかどうか」を確認するよりも、「今の関係にどの程度満足しているか」という主観的な充足感を見直すことが先決だ。満足度は、愛の情熱を暴力や過度な嫉妬から守る防波堤の役割を果たしているからだ。

特に、以下の3点を意識することが、科学的に健全な関係維持に繋がるだろう。

1. 親密さの強化:単に一緒にいるだけでなく、信頼に基づいた深い対話を増やすことで、満足度の中心的なノードを活性化させる。
2. 暴力の排除:どんなに情熱的であっても、支配的な行動や攻撃的な態度は満足度を直接破壊し、ネットワーク全体を崩壊させることを自覚する。
3. 嫉妬の再定義:特に男性の場合、嫉妬を「愛の深さ」と勘違いしがちだが、データによれば嫉妬は暴力的な衝動と隣り合わせだ。嫉妬を感じたときは、それをコミットメントの証とするのではなく、関係の満足度が低下しているシグナルとして捉え直すべきである。

満足度は、恋愛という複雑なシステムを安定させるための「OS」のようなものだ。このOSが正常に機能していれば、多少の嫉妬や不安が生じてもシステムがダウンすることはない。しかし、満足度が低下すれば、愛というアプリケーションさえも暴走し、牙を剥くことになるのである。

結び:愛の正体は満足度だった?

結局のところ、情熱的な愛も燃え上がるような嫉妬も、すべては「日々の満足度」という盤石な土台の上で踊っているに過ぎない。愛さえあれば暴力も嫉妬も乗り越えられるというのは、どうやら科学的には少々甘い考えのようだ。満足度という土台が崩れれば、愛の形は容易に歪んでしまうのだから。

引用:Ventura-León, J., & Lino-Cruz, C. (2023). Love, jealousy, satisfaction and violence in young couples: A network analysis. PLoS ONE, 18(5), e0285555. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0285555

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