恋が性格を変える?最新研究が示す「片思い」の意外な効能

愛知淑徳大学の古谷かすみ氏、高野恵代氏、久保南海子氏の研究チームは、2025年に青年期の恋愛関係が心理的発達に与える影響について、国内外の先行研究を包括的に整理した論文を発表しました。

研究チームは、12歳から30歳までを対象とした43本の論文を分析し、恋愛関係の形成が自尊感情や性格特性にどのような変化をもたらすのかを明らかにしました。

今回のポイント

  • 恋愛関係を築くことで、神経症的な傾向が低下し、自尊感情や外向性が向上する。
  • 直接的・積極的なアプローチを行う個人ほど、恋愛関係の形成に成功しやすい。
  • 「シングル」は一律ではなく、自発的か非自発的かによって幸福度が大きく異なる。
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研究の手法

本研究は、青年期および若年成人(12歳から30歳まで)の恋愛に関する国内外の知見をまとめたレビュー論文です。

研究チームは、J-STAGE、CiNii Research、APA PsycInfoなどの主要な学術データベースを使用し、計43本の論文を厳選しました。

選定された研究には、特定の時点での心理状態を測定する「横断研究」だけでなく、数年にわたって同じ人物を追跡する「縦断研究」も含まれています。

主な分析対象は、恋愛関係の形成プロセス、人格特性(ビッグファイブなど)の変化、主観的幸福感(well-being)、そして交際相手がいない「シングル」の状態にある若者の心理的特徴です。

研究の結果

1. 恋愛関係を形成するまでの動機と戦略

恋愛関係を求める動機には、主に4つの因子があることが示されました。

「内発的調整(親密さへの欲求)」「同一化的調整(性的衝動)」「外発的調整(周囲の圧力)」「非意欲(利点を感じない)」の4つです。

調査によると、自尊感情が低い青年は、周囲の仲間に認められるために恋愛をしようとする「外発的調整」を強く支持する傾向にありました。

また、相手に接近する際の戦略についても分析されています。

相手と話す、触れる、デートに誘うといった「直接的な戦略」は、恋愛関係の形成成功率と正の相関がありました。

一方で、相手が接近してくるのを待つような「受動的な行動」は、成功率と負の相関があることが数値で示されました。

2. 恋愛が人格にもたらす劇的な変化

4年間にわたる縦断研究の結果、恋愛関係の変化を経験した若者には顕著な人格発達が見られました。

具体的には、交際を開始したグループは、開始前に比べて神経症傾向とシャイネスが減少し、外向性、自尊感情、誠実性が増加していました。

これに対し、4年間ずっとシングルだった層や、すでに交際中だった層には、このような人格の変化は見られませんでした。

さらに、8年間の長期追跡調査では、一度変化した人格特性は、交際が継続する限り長期的に維持されることも明らかになっています。

3. シングルの実態と幸福度の格差

国立社会保障・人口問題研究所(2023)のデータによると、青年の約7割に交際相手がいません。

そのうち、男性の33.5%、女性の34.1%は「交際を望まない(自発的シングル)」と回答しています。

一方で、男性の31.5%、女性の24.6%は「交際を望んでいるが相手がいない(非自発的シングル)」という状況にあります。

幸福度の調査では、「交際を望んでいるが相手がいない層」は、他の層に比べて抑うつや孤独感が高いことが数値で示されました。

また、自尊感情が低い男性は「非自発的シングル」になる可能性が高いという結果も報告されています。

著者の考察・結論

著者は、恋愛関係の形成が青年の人格発達において最も強い影響を及ぼすライフイベントの一つであると述べています。

特に、神経症傾向(不安や抑うつなどの感情的な不安定さ)が恋愛によって改善される点は、適応的な成長として重要です。

一方で、現代の若者の多くが「交際を望みながらも達成できていない」状況にあることにも注目すべきだと著者は指摘しています。

研究チームは、この「非自発的シングル」の若者が抱える心理的苦痛や、彼らがどのように関係を構築していけるのかを検討することが、今後の恋愛研究の課題であると推測しています。

また、日本特有の現象として「片思い」や「パラソーシャルな恋愛(アニメキャラやアイドルへの恋愛感情)」についても言及されています。

片思いには、努力による喜びや自尊感情の向上といったポジティブな側面がある一方で、情緒の不安定さを招くリスクも存在します。

著者は、これらの多様な恋愛の形が、青年の心理的幸福感にどのように寄与しているのかを、さらに詳細に調査する必要があると考えています。

まとめ

本研究は、愛知淑徳大学の古谷かすみ氏らが、国内外の膨大なデータを元に、恋愛が若者に与える心理的影響を体系化したものです。

結論として、恋愛関係を築くことは単なるプライベートな出来事ではなく、自尊感情を高め、性格を安定させる「人格発達の機会」であることが浮き彫りになりました。

特に縦断調査によって、交際開始後に神経症傾向が下がり、外向性が上がるという因果関係が強く示唆された点は大きな成果です。

今後は、恋愛を望みながらも相手が見つからない若者への支援や、多様化する恋愛感情(パラソーシャルなど)が成長にどう影響するかの解明が期待されます。

参考文献

古谷 かすみ・高野 恵代・久保 南海子 (2025). 青年における恋愛関係の形成に関する心理学的研究の動向と展望. 愛知淑徳大学論集 -心理学部篇-, 15, 1-15.

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