台湾の世新大学の研究チームは、2025年に位置共有アプリを利用するカップルの心理的影響に関する最新の調査結果を発表しました。
今回のポイント
- 位置共有による「監視」を納得して受け入れている人ほど、心理的な侵入感を感じにくい傾向があります。
- アプリで把握できる情報の範囲が広すぎると、たとえ合意の上でも侵入感が高まり、関係の満足度が低下します。
- パートナーを守ろうとする「配偶者防衛」の意識は、意外にも関係の満足度を向上させる要因となっています。
434名の利用者を対象にした実態調査
研究チームは、GoogleマップやiSharing、Life 360などの位置共有アプリを恋愛関係で実際に利用している434名を対象に、オンライン調査を実施しました。
参加者の内訳は男性46.8%、女性53.0%で、年齢層は26歳から30歳が最も多く、次いで20代前半と30代が続きます。回答者の約44%が3年以上の交際期間を持つカップルであり、長期的な関係におけるテクノロジーの影響を分析しています。
調査では、アプリの利用に対する「受け入れ度」、アプリで把握できる情報の「範囲(スコープ)」、プライバシーへの「侵入感」、パートナーを守り不適切な接触を防ごうとする「配偶者防衛」、そして「関係の満足度」の5項目を測定しました。
満足度を左右する心理データの解析結果
収集されたデータを統計的に解析した結果、位置共有アプリがカップルの満足度に与える影響について、以下の事実が明らかになりました。
1. 監視の受け入れとプライバシーの侵害感
監視の受け入れ度が高いほど、プライバシーへの侵入感は有意に低下することが示されました($\beta = -0.421$)。自ら納得して位置共有を行っている場合は、心理的な負担が少ないことを示しています。
2. 把握できる情報の「広さ」によるリスク
一方で、アプリで把握できる情報の範囲(移動履歴や行動パターンなど)が広くなるほど、侵入感が有意に高まることが示されました($\beta = 0.383$)。把握できる情報が詳細すぎると、たとえ監視に同意していても「踏み込まれすぎている」と感じるリスクがあるのです。
3. 満足度への直接的な影響
解析の結果、プライバシーへの侵入感は関係満足度を低下させる要因となっていました($\beta = -0.248$)。一方で、パートナーを守ろうとする「配偶者防衛」の意識は、満足度を向上させる結果となりました($\beta = 0.204$)。
著者の考察:信頼と自律のバランス
著者は、配偶者防衛が満足度を向上させた結果について、当初の予測に反する興味深い発見であったと述べています。位置共有を通じた見守り行動が、相互に受け入れられた文脈においては「束縛」ではなく、相手を大切に思う「ケア」や「投資」として再解釈されている可能性を示唆しています。
特に台湾の文化圏では、対立を避け調和を重んじるため、位置共有への合意が関係を維持するための安心材料として機能しやすい側面があります。しかし、情報の範囲が極端に広がるとプライバシーの懸念が再燃し、自律性が損なわれることで不満が生じます。
研究チームは、プライバシーの懸念は親密な関係でも消えることはなく、テクノロジーを介した柔軟な交渉と、適切な境界線の維持が満足度の鍵であると推測しています。
現代のカップルは、位置共有アプリを通じて安心感と個人の自律性の間のバランスを常に模索し続けています。
参考文献
Lin, C. S. (2025). Privacy paradox among romantic couples: the use of location sharing apps. Frontiers in Human Dynamics, 7, 1553619. https://doi.org/10.3389/fhumd.2025.1553619


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